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日大教授・水野和夫氏が語る(上) 「資本主義は死期に突入」

http://gendai.net/articles/view/news/149784


水野和夫氏/(C)日刊ゲンダイ
資本主義は死に近づいているのではないか。最新著(「資本主義の終焉と歴史の危機」=集英社新書)で、こう問いかけるのは、元三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフエコノミスト水野和夫氏だ。バリバリの金融マンとして活躍、その後、内閣審議官(国家戦略室)などを歴任し、大学教授へ。現場、統計、理論を知り尽くしている人の発言だけに重い。資本主義の死とは何を意味するのか。だとすると、アベノミクスとは何なのか。全サラリーマン必読――。

―まず、資本主義の死とは、どういう意味なのでしょうか?

投下した資本が自己増殖していくのが資本主義のメカニズムですが、いまや、資本を投下しても利潤を生み出さない時代。資本主義の死期に突入しています。なかでも日本は最終局面を迎えています。なぜなら、利潤率とほぼ一致する10年国債の利回りがほぼゼロ。ゼロ金利が20年近く続くのは世界史上初のことです。他の先進国でも「日本化」は進み、英米独の国債利回りも超低金利現象を起こしています。つまり、資本主義というシステムが音を立てて崩れようとしているのです。
■いまや利潤を得られるフロンティアはどこにもない

―ちょっと待ってください。世間はアベノミクスで景気が良くなったと浮かれていますよ。

株価が上がったという事実だけで、アベノミクスが成功していると考えるのは誤りです。実体経済での需要がなくなり利潤が出ない状況なのに、無理やり株価だけをつり上げている。米のサマーズ元財務長官は「バブルは3年に一度、生成し、はじける」と言っていますが、バブルで得をするのは金融資産をうまく運用できる一握りの富裕層だけです。バブル期には設備投資や雇用は膨らみますが、バブルが崩壊すれば、設備は一気に過剰となり、人々はリストラにあいます。つまり、バブル崩壊のツケを払わされるのは、99%の私たちです。アベノミクスに限らず、経済が永遠に成長を続けるという「成長教」の誤りにそろそろ気づかなければなりません。

―成長ができないというのは、新たな市場=需要がもう見当たらないからですか?

その通りです。資本主義は常に「中心」が「周辺」というフロンティアを広げることで、利潤を上げてきました。かつては北の先進国が「中心」で、南の途上国が「周辺」でした。しかし、「アフリカのグローバル化」が叫ばれる今、さらなる地理的フロンティアは残っていません。もはや実体経済において投資をして利潤を得られるフロンティアがないため、資本の側は利潤を得る先を実体経済から金融経済にシフトしました。世界中からマネーを集めて1万分の1秒単位で投資し、利潤を求めるようになったのです。
しかし、金融資本主義はバブルの生成と崩壊を繰り返し、99%の人々を苦しめるだけです。銀行が破綻すれば、その救済に巨額の公的資金が使われる。人々から広く重く税金を取り、生き残った人々の富を増やしていく。一体、何のための資本主義なのでしょう? 投資する意義は何なのか。それを問わねばいけないと思います。

■国債金利2%割れという異常事態
―資本主義の限界に気づいたのはいつごろですか? どういう兆候があったのでしょうか?

おかしいと最初に感じたのは、10年国債の利回りが2%を下回った1997年です。その後、ITバブルが起きても、小泉政権で戦後最長の成長を経験しても、利回りは2%を超えません。国債金利≒資本利潤率ですから、従来の景気循環と異なる資本主義の死期に突入したと感じたのです。それで世界の金利の歴史を調べると、17世紀のイタリアのジェノバでも超低金利現象があり、11年間にわたって金利2%を下回る時代が続いていました。この時のジェノバは山のてっぺんまで先端産業であるワイン製造のためのブドウ畑になっていた。つまり利潤が得られるような投資が隅々まで行き渡ってしまった現代と同じように、フロンティアがなくなっていたのです。

―当時の地中海世界はその後、大航海時代を迎え、新しいフロンティアを広げていきました。しかし、いまはそれができない?
1970年代にベトナム戦争でアメリカが事実上敗北し、自分たちの思うようなフロンティアを広げていくことはできなくなりました。また、オイルショックなどで原油価格が上昇し、西側先進諸国が成長するメカニズムが崩れたと思います。もはやかつてのように途上国を「周辺」とすることはできませんから、先進国は国内に「周辺」をつくっている。つまり、ひと握りの投資家が中産階級を食い物にし、没落させているのです。(つづく)

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http://gendai.net/articles/view/news/149811

日大教授・水野和夫氏が語る(下) 「ブロック経済の備えを」

水野和夫氏/(C)日刊ゲンダイ
―そんな前から資本主義は限界を迎えていたのですか? となると、その後の40年というのは?

先進国が自国のために資本主義の延命策をとり、もがいた時代として位置づけられるべきでしょう。

―しかし、リーマン・ショックでいよいよ、ニッチもサッチもいかなくなった?

その通りです。米国は資本主義がこうやって終焉を迎えつつあるのをはっきり認識して確信犯として行動しています。

―安倍首相もわかっている?

わかっているとは思えません。米国のウォール街が「中心」に、日本の中間層が「周辺」になろうとしているのに、その認識がないように見えます。「グローバル化は止められない。最後のバスに乗り遅れるな」という首相の考えは間違っています。流れが止められないのではなくて、米国が金融資本を自己増殖させるために人為的にやっているわけです。後戻りできないというのはマジックです。グローバル化で幸せになるのは1%で、ほとんどの人は取り残される。だから、あちこちでデモが起こっているのではないですか。
―グローバル化で大企業が稼げば、いわゆるトリクルダウンが起きるのでは?

グローバル化を唱える新自由主義とは、政府よりも市場の方が正しい資本配分ができるという考え方です。資本配分を市場に任せれば、労働分配率を下げ、資本側の利益を増やします。ですから、富むものがより富み、貧者はますます貧しくなる。格差が広がっていくと、民主主義の土台が腐っていくという大きなマイナスもあります。こんな資本主義なら早く死期を迎えてもらってしまったほうがいい。そのためにも次のシステムを用意しておかなければいけない。

■中韓と対立する安倍外交の危うさ

―中国やインドなどの新興国も経済成長は期待できませんか?

市場は新興国が先進国並みに豊かになることを期待していますが、無理です。新興国の人々が先進国並みに自動車を所有し、電気冷蔵庫を購入し、鉄を消費するには莫大なエネルギーが必要になる。10カ国程度の新興国が先進国並みにエネルギーを消費するだけで現在の発電能力を2倍にする必要があるのです。
―その前に、資本主義の限界が露呈するのでしょうね。となると、資本主義はどういう形で終わるのでしょうか?

核兵器があるので、戦争によるフロンティア開発競争は考えにくい。G20が暴走する資本主義にブレーキをかけるシナリオも、米国が反対するから難しい。となると、中国のバブル崩壊というハードランディングになるのではないでしょうか。その後、世界はグローバル化ではなく、保護主義的にブロック経済化していくと思います。

―日本はどうしたらいいのでしょうか? 

無理やり成長しようという発想を捨てることです。1歩前に出ようとすると3歩下がることになる。前に出なければ、後退はない。バブル崩壊もありません。もうひとつ、ブロック経済化に備えて、中韓関係を大事にすることです。中韓と敵対し、周辺国ばかりに行っている安倍外交は、資本主義の今後を見据えて行っているとは到底思えません。

▽みずの・かずお 1953年生まれ。元三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミスト。博士(経済学)。現在は日大国際関係学部教授。「資本主義の終焉と歴史の危機」(集英社新書)など著書多数。



転載元: ニュース、からみ隊

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